既報の通り昨日9月10日、東京都渋谷区の小田急小田原線で、沿線建物火災が発生し、通りかかった列車に燃え移った、という事故なのか事案がありました。ANN報より。
ANNニュース:
建物火災が小田急線に燃え移り乗客が避難
なんとも、ショッキングな光景ですね。出来事としては、10午後4時過ぎ、新宿行きの普通電車が現場付近に差し掛かった際に、沿線建物火災の現場隣に止まってしまい、延焼建物と線路とが至近距離だったため、止まった電車の屋根に燃え移った、というもの。
場所が場所ゆえ、さらに時間帯もあって、多くの映像記録が残されていました。それらはニュースにもなっておりますが、一番ショックだったのは、今まさに燃えている建物の横で電車が停止してしまった映像。
あれは傍から見ると、なんであんなところで停まったのだろうと思いますね。
そもそも昨日の事故の一報は、外でNHKラジオの大相撲中継中に上乗せ速報のニュース。たまたま現場に居合わせたNHKの職員がおり、電車の屋根に火が燃え移ったものの、NHKが速報を入れた時点では、既に消されていた、というもの。「電車の屋根に燃え移るとはただ事ではないな」、と思いました。
そもそもの問題ですが、なぜ電車の屋根に燃え移ったのだろうか。沿線火災ですと、運転指令から運行抑止が出されます。ただ出火直後では、指令も把握しておらず、そんな狭間にあったのか、とかいろいろ考えました。
そしてどうやら状況が分かりました。電車の運行を止めるため、火災現場に近い踏切の支障ボタンが押されたわけで、それが当該の伸縮行き列車に対して、火事現場の向こう側、即ち進行方向側の踏切であったため、踏切支障ボタンが押されたため、特殊信号発光機が点灯、電車はこの信号機に対して停車措置がとられたわけです。
その結果、列車編成の一部が、今まさに燃えている現場の前で止まってしまったわけで、その数分間停車中に屋根に延焼したわけです。
一部のマスコミでは、踏切支障ボタンが押されたため、電車が自動で非常停止になったという報道がありますが、小田急の運転システムは存じませんが、踏切支障ボタンの押下で、列車防護無線と連動しているのでしょうか。さらに列車防護無線と連動していても、列車防護無線の非常発報があっても、緊急信号が発せられるだけで、列車の停止自体は運転士の非常ブレーキ操作だと思います。
非常発報で、列車が自動で停まれば、それは確かに一刻を争う場合は便利ですが、架線のエアセクションを避けなければならない場合は、一方的に止められては、後に不具合が残ります。
で、踏切支障ボタンが押されたため、非常停止し、その後の運転士の作業は、踏切の非常発報で停まったわけですから、現場踏切の確認に列車から降ります。
そしたら、沿線建物火災であったため、踏切の非常発報を復位させ、運転再開しようとしましたが、その時は既に屋根に燃え移っており、現場の消防士の大声で非常停止になった、というところまで分かりました。
ちなみに電車は燃えません。尤も古い車両はそうではないものもありますが、小田急の当該の車両は新しく、難燃化対策が施されており、あの車両は燃えません。
では何ゆえに、屋根に火が燃え移ったのか。恐らくは、屋根の絶縁素材に燃え移ったのではないかと思います。
屋根は高電流回路も通っており、その絶縁をしなければなりませんし、屋根の防水処理も施さねばならず、そういった素材が燃えたのではないかと思います。
屋根はそんなわけですが、鉄道車両の難燃化対策は、車内からの発火の場合を想定しており、車内の素材は(最近の新しい車両であれば)絶対に燃えません。腰掛のシート布地、一見燃えやすいように思いますが、あれは本当に燃えません。吊り革の合成皮革も燃えません。
ただ実際の運用では、広告が掲出されますが、その広告が燃える恐れはあります。
あと、車両から緊急脱出ですが、迂闊に外に出るのは大変危険です。隣接線路(早い話が反対側線路)の運行停止措置をしてからでないと、旅客を車両の外に降ろすわけにはいきません。
ただ、昨日の場合は、踏切非常発報が行われたため、結果的に新宿発の反対側線路も踏切非常停止信号で抑止がかかった状態でした。
結局、昨日の件は、踏切支障ボタンが押されたため、踏切の手前、即ち現に燃えている火災現場の真横で止まってしまったため、大惨事になってしまったわけで、仮にあのまま進んでおれば、あのような惨事にはならなかったです。
少なくとも、火災現場の手前側踏切の支障ボタンが押されていれば、その手前で止まったわけで、しかしその場合は、今度は反対側の新宿発の列車が、火災現場の横で止まってしまうことになります。
現場付近のグーグルマップから空中写真。
中央の屋根が一部斜めになっている建物が、焼けた火災現場の建物。
ちなみにこの場所、公道が通っておらず、狭い私道のみ。いわゆる囲繞地(いにょうち)通行権というものですね。
なので消火活動が大変だったと思います。
列車からの画像。Youtubeの前面展望動画から。反対側線路の新宿発列車から。
この右の木に囲まれた建物が、火災となった建物。
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沿線火災というと、半年ほど前、地元名鉄線で遭遇しました。一宮から名古屋へ向かう急行電車で。
一宮を出た所で列車無線。奥田一号踏切付近で沿線火災。現場付近は徐行。というもの。
そうしたら国府宮駅停車中に、乗った列車に対して、運転指令から呼び出し。「現場付近で一旦停止の上、状況を報告せよ」というもの。
国府宮駅を出たら、最高120km/hまで上昇するところですが、奥田駅手前で止まらねばならず、ゆっくり。
そして件の、奥田駅すぐそばの奥田1号踏切手前で止まるると、左側の田んぼから火の手が高く上がっています。
しかし消防車が到着しておらず、監視のパトカーと警察官がいただけ。
列車は火災現場の横で停車して、無線で云々。線路から約15mほど離れていたため、運転規制はその時点で解除。各列車通常速度で運転せよとの一斉指令でした。
しかし田んぼの中の火の手でしたが、その田んぼに近いところ、線路との間にコンクリートの建物がありましたが、ヒヤヒヤものだったと思います。
小田急の話に戻って。しかし沿線火災で電車の屋根に燃え移るとは、稀有な出来事でした。こういうこともあると、後々に大きな教訓を残してくれました。
さらにマスコミ続報。
ANNニュース:
緊急停止の8分間に延焼か…小田急線車両の屋根に火
SankeiBiz:
小田急火災 自動ブレーキで偶然現場に「そのまま走行していれば、燃え移ることはなかったかも」
MSNトピック:
現場に8分、延焼招く=緊急停止、運行再開で-小田急線火災・警視庁
***追記***
上り線新宿行き(当該列車の進行方向)列車からの現場付近前面展望から。
画像に見えている「×」の灯が、踏切標識。×ではなく、踏切が開通(線路方向に対して開通)していることを示しています。この映像でははっきり見えませんが、別の動画では「×」の標識柱に併設された特殊信号発光機(回転赤色灯・続称クルクルパー)があります。
この「×」灯火の左横の建物が火災となった建物で、この踏切標識に特殊発光が灯されれば、この手前で列車は止まるはずですが、この位置で列車3両目が差し掛かる位置で停車したのは、
1,もう一つ向こうの踏切支障ボタンが押されたのか、
2,本当に列車が今まさに向かっている状況で押され、特殊発光の状態でこの場を戦闘が超えてしまったのか、
3,もう一つ或いは、小田急は本当に踏切支障ボタンが押されると、防護無線と連動で、一方的に止めるシステムなのだろうか。