弊ブログ、8月24日記事で、東山動物園内のモノレール「スカイビュートレイン」に乗ったことを書きました。
このモノレールは動物園内の遊戯施設との位置づけですが、乗り場(駅)が二か所あるので、交通機関的な乗り方ができ、「もぐりの鉄道」と書いたら、おもしろいとの反応を頂きました。
この、もぐりの鉄道か、正式な鉄道かの違いで、関連しての記事です。
こうした、ある特定施設内の軌道輸送を遊戯施設とするものは、東山動物園にかぎらず、どこでもあるものですが、その代表的な例が「おとぎ電車」。
おとぎ電車(列車)はモノレールタイプではなく、普通に地べたにバラスト道床を造り、枕木とレール。
そこを通る車両はおとぎの国に出てきそうな機関車と客車、というシチュエーション。
こうした類のものはよくあり、ほぼ全てが円周走行で、乗り場(駅)が一か所で必ず元に戻るもの。
モノレール状の乗り物が遊園地内にかつてあった例として、神奈川県のよみうりランドと、奈良県の奈良ドリームランド。
いずれも、都市モノレールの実用化試験のような位置づけで建設されたもので、神奈川県よみうりランドは日立式、奈良県奈良ドリームランドは東芝式と呼ばれるもので、
神奈川県のよみうりランドモノレールは運輸省管轄の鉄道で、奈良ドリームランドは運輸省管轄の鉄道ではありませんでした。
いずれも円周状の路線ですが、この両者の違いは、よみうりランドは駅が二か所あり、一周乗車も異なった駅間のワンウェイ乗車も可能。対して、奈良ドリームランドのモノレールは乗り場が一か所だけで、乗車したら必ず同じところへ戻らねばなりません。
神奈川県のよみうりランドは完成当時は、関東レース倶楽部という名称で始まり、運転開始後に運輸省の方から何か指示があったらしく、改めて地方鉄道敷設免許を得て、地方鉄道線に変わっております。
一方の奈良ドリームランドはそういった指示が無かったようで、廃止撤去まで遊戯具扱いで来ました。
都市モノレールの実証実験はこの地域でもあり、その例が、名鉄のモノレール線。よみうりランドと同じく日立式と呼ばれるのもので、よみうりランドよりはさらに大型化した軌道桁と車両。
この名鉄での成果が、後に東京モノレール羽田線につながっています。
もう一つが、東山動物園内にあった、懸垂式モノレール。三菱式と呼ばれるもので、凹の字を逆さにしたような軌道桁内を台車が通り、そこから車体をぶら下げる方式。
軌道面が雨雪にさらされないので、安定した運転ができる、と期待されていました。
雨雪には強いですが、構造的に強風にはたいへん弱く、風による運転規制はかなり厳しいものです。
この三菱式懸垂モノレールが東山動物園内にかつてあり、正式な地方鉄道線でした。
運輸事業者名は、「名古屋市交通局協力会」。名古屋市交通局の外郭団体です。(早い話、天下り先か?)
この東山動物園・懸垂モノレールの廃車体と駅がまだ残っています。
旧植物園駅
説明書き
こちらの方に軌道は伸びていました。
新旧モノレール。
このかつての懸垂式モノレールは、もぐりの鉄道ではなく、正式な鉄道でした。
ここでの成果が、後に湘南モノレールの実用化につながっています。
つまり、鉄道(というか軌道式交通機関)か否かの境目は、駅の数にあります。駅が二つ以上であれば、ワンウェイの乗車、即ち交通機関としての役割、駅が一つだけでは、交通機関としての役割を果たせず、単なる遊戯具扱いです。
この旧植物園駅舎の建物の下はうどん屋さんが入っていました。東山動植物園再生プランで、飲食店の営業形態変更で、店舗を閉めました。昭和12年の開園当時から営業していたそうで、東山動植物園の歴史を見つめてきた老舗でした。
ここのおうどんのお出汁は、関西風の薄味、なかなか美味しく、昔の雰囲気を残すお店屋さんでしたが、昨今のライフスタイルには合わず、店を閉められてしまいました。
再生プランがどんどん進んでいますので、このモノレール駅舎も撤去されるかもしれません。
最後に、非常に変わった、というか、何でこれが地方鉄道だったのか?という例を一つ。画像は、神戸市北区有馬温泉で。
ここにある老舗の兵衛旅館にかつてケーブルカーがありました。
途中、川を渡るので、その橋梁がまだ残っています。
その画像です。
紅葉の季節に撮影したので、風景がそうなってます。
この兵衛旅館、本館と小川の向うの高台に新館とがあり、この両館を結ぶためのケーブルカーです。
普通に建物内施設で、済ませばよかったのですが、どういう事情かは分かりませんが、運輸省の地方鉄道事業敷設免許を得て、建設されています。
開業と廃止の資料では、運輸事業者名「兵衛旅館」、運輸開始日1960年4月1日、運輸廃止日1980年3月21日、運輸区間、万年-向陽、旅館客専用、営業キロ数0.1kmとあります。
こういった変わった鉄道を訪問された方のお話では、営業キロ数は0.1kmですが、四捨五入した値で、実際は90m程度。
駅は本館の部分と終点、さらに途中駅があり、別館への「交通機関」であるとのこと。
これだけ短い距離なので、ケーブルカーでも交換設備は無い、完全な単線で、車両(搬器)に結ばれたケーブルの一方はバランスウェイトにつながれた構造。すなわち、エレベータと同じ構造で、実際に斜行エレベータでも同じ構造のものがあるとのことです。
なので動かす取り扱いは簡単ですが、旅客(即ち泊り客)には絶対に扱わせず、専従の従業員の操作だったそうです。
つまち、専従の従業員は、いわば「鉄道係員」ですね。運輸省もそのような認識だったそうです。
この兵衛旅館のケーブルカーは館内のエスカレータ設置で撤去され、画像の橋の部分は非常階段だそうです。
兵衛旅館には、当時の写真などが展示されているそうですが、一流の旅館、価格も一流で私には泊りに行くことはできません。そもそも出かけられないですし。
こういう変わった「地方鉄道」がかつてあった話。多いな余談でした。
***追記***
遊園地がらみでもう一つもぐりの鉄道がこの地方にかつてありました。犬山のモンキーパーク遊園地。成田山の少し上の辺りからモンキーパーク内を結ぶ610mm軌間の鉄道で(軌間は実測)、おとぎ列車と称する乗り物でした。
成田山そばの駐車場から、モンキーパークへのアクセスとしても、モンキーパーク内の乗り場から往復するだけの乗り方もでき、途中に人だけが通る道ですが踏切もありました。第四種踏切です。
同じような性格と形態の鉄道が、埼玉県のユネスコ村にもありましたが、そちらの方は西武鉄道が運行する山口線として正式な地方鉄道。こちらの方は、モンキーパーク(名鉄)が運行する「もぐりの鉄道」でした。
この片道(ワンウェイ)の乗り方に、指摘があったのか、成田山側の駅は廃止し、単なるモンキーパークからモンキーパークへの往復乗車のみになりました。
今は軌道自体が撤去され、おとぎ列車はもうありません。
このモノレールは動物園内の遊戯施設との位置づけですが、乗り場(駅)が二か所あるので、交通機関的な乗り方ができ、「もぐりの鉄道」と書いたら、おもしろいとの反応を頂きました。
この、もぐりの鉄道か、正式な鉄道かの違いで、関連しての記事です。
こうした、ある特定施設内の軌道輸送を遊戯施設とするものは、東山動物園にかぎらず、どこでもあるものですが、その代表的な例が「おとぎ電車」。
おとぎ電車(列車)はモノレールタイプではなく、普通に地べたにバラスト道床を造り、枕木とレール。
そこを通る車両はおとぎの国に出てきそうな機関車と客車、というシチュエーション。
こうした類のものはよくあり、ほぼ全てが円周走行で、乗り場(駅)が一か所で必ず元に戻るもの。
モノレール状の乗り物が遊園地内にかつてあった例として、神奈川県のよみうりランドと、奈良県の奈良ドリームランド。
いずれも、都市モノレールの実用化試験のような位置づけで建設されたもので、神奈川県よみうりランドは日立式、奈良県奈良ドリームランドは東芝式と呼ばれるもので、
神奈川県のよみうりランドモノレールは運輸省管轄の鉄道で、奈良ドリームランドは運輸省管轄の鉄道ではありませんでした。
いずれも円周状の路線ですが、この両者の違いは、よみうりランドは駅が二か所あり、一周乗車も異なった駅間のワンウェイ乗車も可能。対して、奈良ドリームランドのモノレールは乗り場が一か所だけで、乗車したら必ず同じところへ戻らねばなりません。
神奈川県のよみうりランドは完成当時は、関東レース倶楽部という名称で始まり、運転開始後に運輸省の方から何か指示があったらしく、改めて地方鉄道敷設免許を得て、地方鉄道線に変わっております。
一方の奈良ドリームランドはそういった指示が無かったようで、廃止撤去まで遊戯具扱いで来ました。
都市モノレールの実証実験はこの地域でもあり、その例が、名鉄のモノレール線。よみうりランドと同じく日立式と呼ばれるのもので、よみうりランドよりはさらに大型化した軌道桁と車両。
この名鉄での成果が、後に東京モノレール羽田線につながっています。
もう一つが、東山動物園内にあった、懸垂式モノレール。三菱式と呼ばれるもので、凹の字を逆さにしたような軌道桁内を台車が通り、そこから車体をぶら下げる方式。
軌道面が雨雪にさらされないので、安定した運転ができる、と期待されていました。
雨雪には強いですが、構造的に強風にはたいへん弱く、風による運転規制はかなり厳しいものです。
この三菱式懸垂モノレールが東山動物園内にかつてあり、正式な地方鉄道線でした。
運輸事業者名は、「名古屋市交通局協力会」。名古屋市交通局の外郭団体です。(早い話、天下り先か?)
この東山動物園・懸垂モノレールの廃車体と駅がまだ残っています。
旧植物園駅
説明書き
こちらの方に軌道は伸びていました。
新旧モノレール。
このかつての懸垂式モノレールは、もぐりの鉄道ではなく、正式な鉄道でした。
ここでの成果が、後に湘南モノレールの実用化につながっています。
つまり、鉄道(というか軌道式交通機関)か否かの境目は、駅の数にあります。駅が二つ以上であれば、ワンウェイの乗車、即ち交通機関としての役割、駅が一つだけでは、交通機関としての役割を果たせず、単なる遊戯具扱いです。
この旧植物園駅舎の建物の下はうどん屋さんが入っていました。東山動植物園再生プランで、飲食店の営業形態変更で、店舗を閉めました。昭和12年の開園当時から営業していたそうで、東山動植物園の歴史を見つめてきた老舗でした。
ここのおうどんのお出汁は、関西風の薄味、なかなか美味しく、昔の雰囲気を残すお店屋さんでしたが、昨今のライフスタイルには合わず、店を閉められてしまいました。
再生プランがどんどん進んでいますので、このモノレール駅舎も撤去されるかもしれません。
最後に、非常に変わった、というか、何でこれが地方鉄道だったのか?という例を一つ。画像は、神戸市北区有馬温泉で。
ここにある老舗の兵衛旅館にかつてケーブルカーがありました。
途中、川を渡るので、その橋梁がまだ残っています。
その画像です。
紅葉の季節に撮影したので、風景がそうなってます。
この兵衛旅館、本館と小川の向うの高台に新館とがあり、この両館を結ぶためのケーブルカーです。
普通に建物内施設で、済ませばよかったのですが、どういう事情かは分かりませんが、運輸省の地方鉄道事業敷設免許を得て、建設されています。
開業と廃止の資料では、運輸事業者名「兵衛旅館」、運輸開始日1960年4月1日、運輸廃止日1980年3月21日、運輸区間、万年-向陽、旅館客専用、営業キロ数0.1kmとあります。
こういった変わった鉄道を訪問された方のお話では、営業キロ数は0.1kmですが、四捨五入した値で、実際は90m程度。
駅は本館の部分と終点、さらに途中駅があり、別館への「交通機関」であるとのこと。
これだけ短い距離なので、ケーブルカーでも交換設備は無い、完全な単線で、車両(搬器)に結ばれたケーブルの一方はバランスウェイトにつながれた構造。すなわち、エレベータと同じ構造で、実際に斜行エレベータでも同じ構造のものがあるとのことです。
なので動かす取り扱いは簡単ですが、旅客(即ち泊り客)には絶対に扱わせず、専従の従業員の操作だったそうです。
つまち、専従の従業員は、いわば「鉄道係員」ですね。運輸省もそのような認識だったそうです。
この兵衛旅館のケーブルカーは館内のエスカレータ設置で撤去され、画像の橋の部分は非常階段だそうです。
兵衛旅館には、当時の写真などが展示されているそうですが、一流の旅館、価格も一流で私には泊りに行くことはできません。そもそも出かけられないですし。
こういう変わった「地方鉄道」がかつてあった話。多いな余談でした。
***追記***
遊園地がらみでもう一つもぐりの鉄道がこの地方にかつてありました。犬山のモンキーパーク遊園地。成田山の少し上の辺りからモンキーパーク内を結ぶ610mm軌間の鉄道で(軌間は実測)、おとぎ列車と称する乗り物でした。
成田山そばの駐車場から、モンキーパークへのアクセスとしても、モンキーパーク内の乗り場から往復するだけの乗り方もでき、途中に人だけが通る道ですが踏切もありました。第四種踏切です。
同じような性格と形態の鉄道が、埼玉県のユネスコ村にもありましたが、そちらの方は西武鉄道が運行する山口線として正式な地方鉄道。こちらの方は、モンキーパーク(名鉄)が運行する「もぐりの鉄道」でした。
この片道(ワンウェイ)の乗り方に、指摘があったのか、成田山側の駅は廃止し、単なるモンキーパークからモンキーパークへの往復乗車のみになりました。
今は軌道自体が撤去され、おとぎ列車はもうありません。