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Channel: mitakeつれづれなる抄
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「前」は分かりにくいものです

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 安部首相が、消費税増税引き上げを再度、延期するそうです。
 その理由が、今はリーマンショック前の状況に似ている、とかで、増税実施を再度延期するそうです。
 消費税増税やリーマンショック前云々ではなく、この「何々の前」というのは分からないもので、後になって、「ああ、あれが前の出来事だった」とわかるものです。
 よく言われる、先に分かれば苦労せんわ、というものですね。

 この「前」の出来事で、いつも思うのは、国鉄時代末期の山陽本線西明石駅で起きた特急「富士」の脱線事故。
 1984年(昭和59年)に起きた、富士号脱線事故というものは、10月19日に起きたもので、当時国内最長走行列車の西鹿児島発東京行き寝台列車の特急「富士」号が通過駅の西明石駅で、本来の列車線に入るところが、当日は運転線路変更で電車線を走行することで、西明石駅ホームの手前で分岐器の分岐側を通り電車線に入らねばならないのが、担当機関士は、酒酔いの状態で運転しており、この運転線路変更を失念して、通常速度で西明石駅に進入したため、分岐器制限速度を大幅に超過してため、先頭の機関車を除く寝台客車全てが脱線し、機関車の次に連結されていた寝台車がホームに激突して、車体半分が欠きとられる衝撃的な事故がありました。
 この時の機関助士は機関士の酒酔い状態を知っていたものの、非常弁を操作するなど、防護措置をなにもとらなかったことで、後に諭旨免職になっています。
 この機関助士が何もしなかったのは、当時の職場雰囲気で、機関助士は機関士の従属的立場にあり、非常弁を操作して列車を止めると、この「非常弁により列車不時停車」という事実のみが残り、余計なことしやがった、と職場でつるし上げられるようなところがあり、何もできなかった、ということだそうです。

 機関士の酒酔い状態を続ければ、やがて大事故に至ることは容易に想像がつきますが、悲しいかなそれは大事故が起きてから、後になって分かるもので、あの時にこうしておけば・・・という「後悔」になります。
 後悔は先には感じられないもので、上記のリーマンショック前の状況云々、経済不況の前はなかなか分からないものです。
 交通事故、オレオレ詐欺、後になって分かるものですが、いずれもその始まりがあるものです。
 交通事故は不注意で起きるものではなく、事故を起こす要素のある運転をしているから起きるもので、この「今」の運転が事故に結び付くかどうかを知るのは難しいえす。ゆえに毎日毎日必ずどこかで交通事故が起きるものですが。

 難しいことを書きますと、「今」の状態を知るは、数学的な微分です。
 この微分である変化率を積にしたものが積分で、微分の変化率で変化する姿が積分。
 現在の経済状況を微分し、その変化率の値で将来を見通すと積分となり、それがリーマンショック級の経済不況、なのかどうかはわかりませんが、そういうことになります。

 「今」を冷静に知ることは、「未来」を知ることになります。この「今」が将来起きる出来事の「前」を知ることになるのですが、なかなかその「前」は分からないものです。
 最近の例で一つ。熊本地震で、4月14日夜の最初の震度7地震が、熊本地震とされ命名されました。
 しかしその後に起きた、4月16日未明の地震がマグニチュードで上回り、当初は余震とみられていたものが、後にこちらが本震とされ、14日夜の地震は「前震」とされました。
 私が覚えた地震の書物でも、前震は、後になって本震が起きないと前震かどうかは分からないもの、という記述があり、まさしくそんな例が、今年の熊本地震でした。

 さらに、私が経験したものではないけど、昭和一けたの時代の日本。
 戦前の気配からやがて、日本が太平洋戦争に入ってしまう諸々の出来事も「前」がなかなか分からない結果だと思います。
 この「戦前」という言葉も、後々に呼ばれたもので、戦前の時代から「今が戦前です」というような人は、当然ながらいませんでした。
 ここから導き出すのが、2016年の現代、新たな「戦前かも」と仰る方がいます。
 「何かの前」は、分からないものです。

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