Quantcast
Channel: mitakeつれづれなる抄
Viewing all articles
Browse latest Browse all 810

緊急時を緊急時と認識するのは難しいかも

$
0
0
 何かと、ブログにまとめておきたい出来事がありますが、一昨日に気になることが起きました。
 もう何度もニュースなどで報道されていますが、4月4日、東京メトロ半蔵門線九段下駅で、電車の扉にベビーカーの前輪部分が挟まり、そのまま電車が発車してしまったという運行阻害がありました。
 いくつかの報道で伝えられていますが、電車内の非常ボタン、さらに駅ホーム設置の非常ボタンが押されたにも関わらず、電車が発車してしまい、挟まったベビーカーは、これを推していたお客さんは手を放し、ベビーカーはそのまま引きずられて、ホーム端の柵に当たり、破損してしまった、ということです。
NHKニュース:車掌「乗務の後まで気づかず」
Yahooトピック:メトロ社長が陳謝「全乗務員に監視業務を徹底」

 出来事をまとめると、赤ちゃんと父母の三人連れのお客さんが、九段下駅で半蔵門線押上駅方向の電車に乗ろうとして、赤ちゃんを抱いたお母さんは車内に乗り込み、後からお父さんがベビーカーを押して乗ろうとしたところ、前輪が車内に入ったところで扉が閉まり、ベビーカーの車輪取り付け部分のパイプが挟まった形なので、閉扉の遺物検知にかからず、電車が発車してしまった、というもの。
 ベビーカーの赤ちゃんはお母さんが抱いていたので、無人。
 結果的にベビーカーの破損だけですみましたが、根本的に大きな問題を抱えた事象(事故)です。

 ベビーカーが挟まり、車内の非常ボタンが押されたそうですが、車掌室では大きなブザーが鳴り、何号車で押されたのか、の表示が点いたはずです。
 しかし車掌は、電車の停止措置を取らずに、そのまま発車した。
 報道では、車内のトラブルで非常ボタンが押されと思い、次停車駅(神保町駅)で対処しようとしたとのこと。
 しかし実際には、車内の出来事ではなく、扉挟事故で、これには全く気付かなかったとのことです。

 非常ボタンのブザーには気づいていた、ということですが、停車させることにためらいがあったそうです。
 この話を聞き、かつての国鉄で、職場がかなり乱れていた昭和50年代の末期、夜行寝台特急の富士号東京行きが、乗務前に酒を飲んだ機関士が酒酔いの状態で居眠りをし、夜中から未明の西明石駅の分岐器制限速度を大幅に超え、機関車以降の寝台車が脱線し、ホームに激突して、寝台車数量が大破した事故がありました。
 この時の寝台車、ホームに衝突して破壊された側は通路側で、当時の国鉄のこと、寝台車の乗客も少なく、お客さんにけが人がいなかったのは不幸中の幸いでした。
 この事故機の機関士は、酒酔いで居眠り状態、しかし機関助士が乗務しており、この機関助士、機関士が居眠り状態なのが気づいていながら、非常停止措置をためらった、ということです。

 なぜ機関助士が非常停止措置をとらなかったのか。
 非常停止措置をとれば、脱線事故に至らないので、単に「不時停車」という運転障害の事実だけが残り、ハッキリ言って下っ端の機関助士の立場、そんな立場で「なぜ余計なことをするのだ!」と責められそうな職場雰囲気もあり、非常停止のためらいがあった、ということを記憶しております。

 緊急時を緊急時と認識するのは、案外難しいのかもしれません。
 
 東京メトロの、この当該の車掌さんはまだ新人で、新人の立場で、非常停止にためらいがあったかもしれません。
 非常停止させれば、物理的な事故には至らず、不時停車の運転事故となり、こればかりが表立って後々大変なことになる、という想いがあったと想像されます。

 「不時停車」とは、本線列車が出発合図で発車後に、緊急停止措置で停車することで、運転事故報告の対象になります。

 半蔵門線九段下駅押上方向の線路は、最後部の車両がカーブにかかり、最後部の車掌からは編成全部が見えない状況。そのため、乗降確認用のモニタが付けられています。

 この東京メトロの新人女性車掌さん、この出来事を糧として安全の基本を心得、乗務に戻ってほしいと願います。

 追記として、余談ですが。前記、国鉄寝台特急の機関士飲酒ですが、その後の調査で、岡山での乗務前に、後続の寝台列車担当の機関士も飲んでいたことが分かり、事故当該の機関士は懲戒免職、機関助士は諭旨免職、後続の飲んでいた機関士もそれなりの処分がありました。後続の機関士は、富士担当の機関士の後輩で、断り切れなかった、らしいですが、国鉄最終期の乱れに乱れていた職場環境であったこととしての象徴的な出来事として覚えています。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 810

Trending Articles