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Channel: mitakeつれづれなる抄
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勝手踏切と勝手に言われるけど・・・

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 今年の7月に、JR西日本の京都府宇治市内で、「勝手踏切」と呼ばれる正規の踏切ではない鉄道横断か所が閉鎖された、というニュースがありました。
 京都新聞webにまだ記事が残っていました。
記事2016年7月28日:「勝手踏切」を完全閉鎖 京都・宇治、JR奈良線の全5カ所

 踏切とは、道路と鉄道の平面で交差する箇所で、線路の軌道内は、人や車が通りやすいよう、レール間を道路と同じように歩み板などが置かれ、通りやすくしているほか、踏切である旨の標識、更に列車接近時には警鐘を鳴らす、警報機と遮断機がついているものです。
 この勝手踏切はそのいずれもが無く、踏切として最低限の設備である、踏切標識もなく、人はレールと道床の砂利の上を歩くことになります。
 なので、列車との衝突事故が発生しやすく、危険極まりない行為。
 この宇治市内にある「勝手踏切」が今年7月に閉鎖された、というニュースが全国ニュースにもなりました。
 この「勝手踏切」が住民の道(近道)で、ここを通らないと、どこへ行くにも大回りになるというものです。
 「閉鎖」とは、線路沿いがフェンスで囲われているのですが、この勝手踏切の部分だけは、人が通れる隙間だけ開けて、暗黙に通れるようになっていたもの。
 しかし「開いている」とは言っても、見た目フェンスが重なっているように見えて、知らない方には入れそうにもないです。
 でもこれ落ち着いて目で追えば、迷路のように通路が開いているのがわかります。そして傍らには「鉄道用地内は危険なので通るな」の注意書き。

 そうです、一見には分からずとも、地元の人にだけには分かる秘密の通路。
 こんな感じです。Youtubeの動画から。
これが勝手踏切だ


 さらにYoutubeにこのニュースの動画がありました。
“勝手踏切”すべて閉鎖に不満の声 宇治市



 で、なぜこのような勝手踏切が出来たのか。近道だから近所の方が「勝手」に通っている、ような印象を受けますが、そうではなく、人が数百年に渡って通路として使用していた小径を横切って鉄道が敷設されたため、本来なら踏切とするはずですが、正規の踏切とはならず、暗黙の小径として地元の知っている人だけが通る、ものとなりました。
 こういう小径を「赤道(あかみち)」と言います。明治初期に作成された土地の所有を示す、公図とも呼ばれる地籍図に赤色で線を入れ、どの所有でもない、公の小径として表記されていたことから「赤道(あかみち)」と呼ばれるようになりました。
 この赤道は正規の道路でもないので、鉄道線路横断では踏切は設置されず、「勝手踏切」として地域の人が線路軌道を渡ることになります。

 このような赤道の鉄道横断か所では、弊ブログで過去、こんな記事を書きました。
 2009年8月24日投稿:赤道(あかみち)の鉄道線路横断・中央本線奈良井

 長野県の中央本線奈良井駅近くで、旧中山道の奈良井宿沿いの個所、赤道横断か所が連続しているところで、フェンスがあるものの、人が通る部分のフェンスは、両側から開けられる賢い構造になっていることを書いたものです。
 今はこの奈良井の赤道は、どうなったのだろうか。ここも閉鎖する代わりに、一か所を踏切に昇格させるという新聞記事も読みましたが、その後が分かっていません。
 体調を崩して以降なので、現地へ行けていません。

 というワケで「勝手踏切」という言い方は、マスコミの驕りを感じます。
 確かに正規の踏切ではないけど、人が先祖伝来通ってきた通路に、後から鉄道線路が交差し、その通路が正規の道でなかっただけに踏切が置かれず、それが21世紀の今になって、完全閉鎖とはどんなものなのでしょうね。

 ちなみに小径の赤道は、法的には市町村道ではないけど、公の財産、つまり国有財産(大蔵財産)ということで公有ということになります。
 旧道路法では里道とされていたものです。
 この里道は、里の道、すなわち地元の人だけが通る小径ですが、その多くは踏み分け道程度なのですが、中には自動車が通れる幅で、更には舗装もしてあるところがあるそうです。
 道の世界も奥が深いです。ただ里道なので、舗装は全て住民の自己負担。
 今はこの里道は、市町村の管理に移行されています。

 で、勝手踏切の閉鎖は、安全性向上でそれはそれで宜しいのですが、地域の人は実際に困ります。
 「近道で勝手踏切を通るのは勝手だ」と言う方がいますが、それは赤の他人だから「勝手」に言えるわけで、地域の方には切実な問題。
 一番いいのは、踏切新設ですが、現在は新たな踏切は認められていません。
 長野県奈良井で、踏切化があったらしい、というのは、少し離れた踏切を立体交差にし、踏切が一か所減るので、その「減った踏切」を奈良井の踏切にする計画、とのことを読みました。
 宇治市の場合は、ほかの正規の踏切もそれなりに必要で減らすわけにはいかず、残すは立体交差だけです。
 自動車が通れる道路の立体交差は多額の費用がかかりますが、人が通るだけでしたら、横断歩道橋のようなものを設置すれば可能です、が、そのスペース、階段部分のスペースが置けるかどうか、更にはお年寄りの中には、ベビーカーのような手押し車を押して行かれる方もいて、そんな方は横断歩道橋は使えません。

 勝手踏切は勝手な存在なのでさっさと閉鎖!、とは一言では片づけられない問題です。

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